その背中、抱きしめて 【上】



「どうしても先輩と同じように打ちたかったんだよ。たしかに左打ちにすんのすっげぇ大変だったけど、打てるようになった時は震えるほど嬉しかった」


(わ…)


今まで見たことないような高遠くんの優しい笑顔。

ちょっとだけ目を伏せて、その頃を思い出してるように。

あと、初めて私との会話で『すっげぇ』って男言葉使った。


(うわぁぁぁ…やっばい、感動!高遠くんの”初めて”2連発!)


初詣の時の命令口調もかなり萌えたし、高遠くんの男言葉ヤバイなぁ。

あまりの感動とドキドキに、私は右手で口を押えて下を向いて震えた。


「なに震えてんの」

私の左手に触れたままでいた高遠くんが怪訝そうに私の顔を覗き込む。

「…何でそんな顔真っ赤なんだよ」

今度は高遠くんの顔が赤くなった。


「…ごめん、ちょっと脳内でコーフンして…」

恥ずかしくて、また私は下を向いた。

(ひーーーーー…)



< 384 / 503 >

この作品をシェア

pagetop