その背中、抱きしめて 【上】



そして”くいっ”と手を高遠くんの方に引っ張られて、いとも簡単に膝の上に座らされた。

正面を向いてる高遠くんに対して、横を向いて座る格好。


「どう?座り心地は」

「……パニックで何も考えられません…」


高遠くんはふっと笑うと、そのまま私を見続ける。

「…どうしたの?」

「いや、なんか先輩の方が目線が上っていうのもいいなぁって思って」


いつも私の目線よりだいぶ上にある高遠くんの目線。

いつも優しく見下ろしてくれる目が今は私の目より下にある。



なぜかよくわからないけど、すっごく愛おしくなって…ちょうど私の口と同じ高さにある高遠くんのおでこにキスをした。

「柚香先輩…?」



高遠くんの声で我に返る。

(!!??私、今何した!?すっごい自然に何した!!??)

「ご、ご、ごめん!!なんか私おかしくなった!ごめん今のナシ!!!」


立ち上がろうとした瞬間、後頭部を大きな手で押さえられた。

気付くと目の前には高遠くんの顔。


「おでこじゃなくて、こっちがいい」


高遠くんは自分の唇を人差し指で触った。





「柚香先輩、キスして?」





< 403 / 503 >

この作品をシェア

pagetop