その背中、抱きしめて 【上】
私の家のすぐ近く。
歩きながら高遠くんがだいぶイライラした口調でたたみかけてくる。
「先輩、自覚してね。大地は先輩のこと狙ってるんだから、2人でいたら何されるかわかんないよ。それとも、何されてもいいって思ってる?大地に乗り換える?」
「やだよっ」
何されてもいいわけないじゃん。
(清水くんが何かしてくるとも思えないけど)
しかも乗り換えるとかありえないし。
ムキになって言い返したら、ほっぺたを思いっきりつねられた。
「いひゃいいひゃいいひゃい(痛い痛い痛い)!!」
「だったら無防備になるな。夜の公園なんて人がいないんだから、危ないんだよ。男の力で無理矢理何かされても逃げらんないんだからな。ほんっと自覚ねぇ」
更につねる指に力が加わる。
「いひゃいー。離ひてー」
冗談抜きに痛すぎる!
人並み外れた握力なんだから、手加減してたって痛いんだよー!
「ごめんなさいは?」
「…ごめんなひゃい…」
本気の涙目。
高遠くんは私のほっぺたをつねったまま上から私を見下ろす。
数秒後、ようやく高遠くんの指から力が抜けた。
「分かればよろしい」
(痛かったぁ…シャレになんない)
ほっぺたをさする。
絶対これ真っ赤になってるよ。
ふいに頭を抱き寄せられる。
「頼むよ、もう」
「…ごめん」