その背中、抱きしめて 【上】



「そういうのを恋煩いって言うんだよ」


食べかけたお弁当の厚焼き玉子が箸から落ちる。

衝撃的なさくらちゃんの言葉。


「恋煩いって、好きな人のことばかり考えちゃって何も手につかなくなっちゃうっていう、あの恋煩い!?」

「他にどの恋煩いがあるのさ」

さくらちゃんが呆れ顔でため息をつく。


「ダメだよ!私、学年末頑張らなきゃいけないのに!」

「知らないよっ」

さくらちゃんの腕に縋るも無理矢理引き剥がされる。

「毎日高遠くんと一緒にいられるんだから、煩ってる暇ないんじゃないの?」

「なんか、会えれば会えるほど夜とか寂しくなっちゃうんだよね…。ずっと会えない方がまだ耐えられるかも」


一緒にいる時間が幸せだからかな。

バイバイした後が余計に寂しくなる。

だったらずっと会えない方が諦めがつきそうな気がする。


「会えない方がマシとか、珍しいこと言うよねよねゆずは」

「さくらちゃんは?羽柴くんと毎日会ってるのに夜とか寂しくならない?」

「んー、一緒にいるのもいいけど1人の時間も欲しいしね。あんまり寂しいとかはないかな。平日は毎日会うしさ。あと私ヤキモチやかないからっていうのもあるかな」


私なんて平日どころか部活で土日も会うのに寂しいとか、やっぱり私おかしいのかもしれない…。


あれ?

ていうか、そういえば私もヤキモチやいたこと今までないかも。



< 409 / 503 >

この作品をシェア

pagetop