その背中、抱きしめて 【上】
いや、違うな。
ヤキモチをやく場面がないんだ。
高遠くん、女子とほとんど話さないから。
だから安心していられるんだ…。
(もしや高遠くん、私にすっごい気を遣ってくれてる…?)
「さくらちゃん、私恋煩いしてる場合じゃなかった!高遠くんに謝らなくちゃ!」
「何、急に」
「私、ヤキモチってやいたことなかった!でもそれって高遠くんの周りに女子がいなかったからなんだよ」
高遠くんがモテないわけがない。
なのに周りに女子が集まらないってことは、高遠くんが近寄らせないからなんだ。
ようやく気づいたよ。
「あー、たしかに。高遠くんの周りに女が群れてんの見たことないかも。まぁ高遠くんバッサリ斬りそうだもんなぁ。いいじゃん、いつも女に囲まれて不安な毎日を過ごすより。まさか不安になりたいの?」