その背中、抱きしめて 【上】
「先輩、今日一緒に帰りませんか?」
「うん、いいよ。じゃあ後で昇降口でね」
約束すると、高遠くんは自分の教室に戻って行った。
それからすぐ羽柴くんが友達と学食から戻ってきた。
「あ、羽柴くん。今日部活ないって」
「おー。今そこで高遠に会って聞いた。何、あいつそれ言うために2年の階まで来たん?」
「そうみたい。それだけ言って帰って行ったよ」
残りのお弁当を頬張りながら答える。
そこにさくらちゃんが割って入った。
「違う違う。それを口実にゆずに会いに来たんだよ。しかも一緒に帰る約束も取り付けに」
さくらちゃんがニヤニヤ笑う。
「ちょっとさくらちゃん!からかわないでよっ」
「からかってないよ。ほんとのことだもん。ゆずが鈍感なだけだよ。バレバレじゃん」
(えー?高遠くん冷静だからそんなバレバレなことしないと思うけど)