その背中、抱きしめて 【上】



「先輩、今日一緒に帰りませんか?」

「うん、いいよ。じゃあ後で昇降口でね」

約束すると、高遠くんは自分の教室に戻って行った。

それからすぐ羽柴くんが友達と学食から戻ってきた。


「あ、羽柴くん。今日部活ないって」

「おー。今そこで高遠に会って聞いた。何、あいつそれ言うために2年の階まで来たん?」

「そうみたい。それだけ言って帰って行ったよ」

残りのお弁当を頬張りながら答える。

そこにさくらちゃんが割って入った。

「違う違う。それを口実にゆずに会いに来たんだよ。しかも一緒に帰る約束も取り付けに」

さくらちゃんがニヤニヤ笑う。

「ちょっとさくらちゃん!からかわないでよっ」

「からかってないよ。ほんとのことだもん。ゆずが鈍感なだけだよ。バレバレじゃん」


(えー?高遠くん冷静だからそんなバレバレなことしないと思うけど)



< 413 / 503 >

この作品をシェア

pagetop