その背中、抱きしめて 【上】
「やばい、迷う」
高遠くんが眉をしかめて口に軽く握った拳を当てて、本気で悩んでる。
駅ビルに入ってる大きなスポーツショップ。
バレーボールコーナーの壁にずらっと飾ってあるシューズは、たしかに目移りしちゃう。
高遠くんが2つのシューズを手に取った。
(お、その二択に絞れた?)
「先輩、どっちの方がいいと思う?」
メーカーの違う2つのシューズ。
どちらも大手メーカーで性能や特長もほぼ大差ないから、あとは好みのメーカーやデザインで決めることになるんだけど。
白ベースに黒のラインが入っていて、アウトソールにショッキングピンクのアクセントがついたシューズ。
もう1つも白ベースで、黒とグレーのラインが複雑に絡み合ってるデザイン。
黒とグレーのラインのやつはシンプルだけどどんなユニフォームにも合う洗練されたデザインだと思う。
しかも高遠くんが好きそう。
だけど、ショッキングピンクのアクセントが気になる。
あんまり明るい色って高遠くんのイメージじゃないけど(似合わないって意味じゃなく)、これは似合いそう。
「こっちがいい」
そのシューズを指さす。