その背中、抱きしめて 【上】
「飽きないよっ、こんなおいしいパスタ…!」
「ぶはっ。じゃあまた食べにおいで。作ってあげるから」
『作ってあげるから』
(そんなこと言われたらホントに来ちゃうんだから)
機嫌良さそうにニコニコしてる高遠くんの顔をチラッと見て、緩みそうになる口元をきゅっと結んだ。
午後は全教科わからないところと不安なところを完璧に理解するまで高遠くんに説明してもらった。
これで出来ることは全部やった。
あとは家で総まとめをして明日からのテストに臨むだけ。
相変わらず高遠くんは暗くならないうちに私が家に着くように気を遣ってくれる。
しかも家まで送ってくれようとするから、それは遠慮した。
その時間を自分の勉強に充ててもらいたいし。
それでも”駅までは”って珍しく頑固なこと言うから、そこはお言葉に甘えて送ってもらうことにした。
「高遠くん、ほんとにほんとに2日間ありがとね」
手をつなぎながらゆっくり歩く。
昨日の朝はまさかこんな楽しいことになるなんて思ってもいなかったのに。
「お礼を言うのは俺の方だよ。ありがと、先輩」
あのクリスマスイブから高遠くんの表情が柔らかくなったと思ってたけど、この2日間でもっともっと柔らかくなった。
(結構ずっと笑ってたしなぁ)
高遠くんの笑顔なんて滅多になくて貴重だったのに、昨日と今日でたくさん見れちゃった。