その背中、抱きしめて 【上】
「送ってくれてありがと」
「気を付けてね。また遊びにおいで」
その時はまた高遠くんの料理が食べたいな。
それから、私も料理上手になるように頑張るよ。
「家着いたらLINEちょうだい。心配だから」
「わかった。じゃあまた明日ね」
笑顔でバイバイして改札をくぐった。
(高遠くん心配性だなぁ。お母さんみたい)
普通、年下彼氏って甘えてきて年上彼女がかいがいしく世話焼くもんだと思ってたけど、私たちってまるで反対で高遠くんが年上っぽいもんなぁ。
地元駅について改札をくぐろうとした時、後ろから聞きなれた声に呼ばれた。
「柚香も今帰りー?」
そこには満面の笑みのお姉ちゃん。
「お泊りどうだったどうだった?」
「楽しかったよ」
率直で簡潔な感想を言う。
「大人になっちゃった?」
お姉ちゃんがすっごい楽しそうにニヤニヤしながら私の顔を覗き込む。
「なってないよっ!」
「はぁ!?一晩泊まっといて何もなし!?」
そんなにドン引きされても、なってないもんはなってない!
そんなことより、もっともっと幸せだったんだから。
「年頃の男の子なのに…柚香の体にあまりにも魅力を感じなかったのか、それとも翔くん自身が…」
お姉ちゃんが青ざめながらブツブツ独り言を言い始めた。