その背中、抱きしめて 【上】
誕生日
着替えて体育館に入ると、部長の金井くんに手招きされた。
隣には監督と羽柴くん。
3人の前に立つと監督が口を開いた。
「今日から試合形式の練習の時に控えチームの方に入ってくれ」
「へ?」
なに急に。
(あ…もしかして…)
この間、一緒にシューズ買いに行った時に高遠くんがそんなこと言ってた。
監督とか金井くんにそれを言ったのかな。
「さっき高遠が俺んとこ言いに来たんだよ。ゆずを練習に参加させてもらえないかって。前田からもお前がすごいスパイク打つって聞いたし」
金井くんが腕を組みながら笑う。
(高遠くん、前田くん…ハードル上げないで)
「いや、あの…私バレーやってたの中学の時だし、男子のパワーとスピードには到底…」
「中学の時は全国2位だったらしいな」
今度は監督が笑う。
「戦力になるとかならないとか関係なく、とりあえず入ってみろよ。どうせ人数足りてないんだから」
羽柴くんまで…。
「…わかりました」
そういうしかない。
あぁ…胃が痛くなってきたかも。