その背中、抱きしめて 【上】

誕生日




着替えて体育館に入ると、部長の金井くんに手招きされた。

隣には監督と羽柴くん。

3人の前に立つと監督が口を開いた。


「今日から試合形式の練習の時に控えチームの方に入ってくれ」

「へ?」

なに急に。



(あ…もしかして…)


この間、一緒にシューズ買いに行った時に高遠くんがそんなこと言ってた。

監督とか金井くんにそれを言ったのかな。


「さっき高遠が俺んとこ言いに来たんだよ。ゆずを練習に参加させてもらえないかって。前田からもお前がすごいスパイク打つって聞いたし」

金井くんが腕を組みながら笑う。


(高遠くん、前田くん…ハードル上げないで)

「いや、あの…私バレーやってたの中学の時だし、男子のパワーとスピードには到底…」


「中学の時は全国2位だったらしいな」

今度は監督が笑う。


「戦力になるとかならないとか関係なく、とりあえず入ってみろよ。どうせ人数足りてないんだから」

羽柴くんまで…。


「…わかりました」


そういうしかない。


あぁ…胃が痛くなってきたかも。




< 472 / 503 >

この作品をシェア

pagetop