その背中、抱きしめて 【上】
「よしじゃあ控え、コートに入れ」
つ…ついにこの時が来た。
私も入らなきゃいけないのかな。
監督から言われるまで知らぬふりしてようか。
「ゆずも入れよー」
監督が大声で私を呼ぶ。
ぎゃーーー!!
「え、ゆず先輩も練習に混じるんですか?」
麻衣ちゃんが目を丸くする。
「かくかくしかじかでね…」
とぼとぼコートに向かう。
控えチームはほぼ1年で、前田くんも控えメンバー。
前田くん以外の子は私が加わるのは初耳らしくて驚いてる。
「足引っ張っちゃうと思うけどよろしくね」
悲しい挨拶をしてコートに立つ。
ポジションはちょうど足りないライト。
高遠くんがクロスに打ってきたらレシーブしなきゃいけない。
(高遠くんのスパイクなんて取れるわけないじゃん)
考えるだけでゾッとする。
「じゃあ始めるぞ」
監督がレギュラーチームのコートにボールを転がした。