その背中、抱きしめて 【上】
「いや、真面目にさ。少なくとも高遠くんはゆずに対して、他の女にはない感情を持ってると思うわけ。恋愛感情とは言い切らないけどさ。見た目は冷酷っぽいけど、ゆずに勉強教えたりとか結構いいやつっぽいし、一見ゆずとは合わなそうだけど案外うまくいくのかなとか思うわけよ。親心ってやつ?」
たしかに高遠くんはすごくいい人だよ。
けど、私のこと好きだから勉強教えてくれてるわけじゃないし、たぶんだけど、一応私先輩で、しかもマネージャーだから彼なりに打ち解けようとしてくれてるんじゃないかなって思ってるんだ。
「ゆずは?ゆずは高遠くんのことどう思ってるの?」
私?
私は…。
「私は、何回も言うように2年前の高遠くんのスパイクに憧れてるだけだよ。私、まだ人を好きになったことないし」
「そっか…。ゆず、これ真面目な話だけどね。私、ゆずの初恋は高遠くんだったらいいなって思ってるんだ。じゃ、着いたからまた後でね」