ヴァンパイア達と甘くて刺激的な生活を
リビングに残るのは私と双子。


沈黙を破ったのは双子の一言だった。


「ねぇ若菜ちゃん。ヴァンパイアっていると思う?」


突然そんなことを聞かれ再び沈黙が訪れた。


「あれ?聞こえてた?」


ずっと黙っていた私を不思議に思ったのか、首をコテンッと傾げながら尋ねられた。


「いや、聞こえてましたけど…ヴァンパイアって架空の生き物ですよね?そんなのいるわけないですよ」


いきなり何を言いだすんだと思い呆れた。


けれど双子は真剣な顔をしていた。


そしてとんでもないことを言った。


「じゃあさ試してみようよ」


一瞬部屋の空気が冷たくなったような感じがした。


こっちを見る目はとても冗談を言っているような目ではない。


「た、試すって何をよ」


「何って吸血?」


「…は?」


本気で何言ってんのこいつ。


(もう無理だ。こいつらにはついていけない)


部屋に戻ろうと席を立つと同時に後ろから抱きしめられた。


「離して!」


今までに無いくらいの大きな声が出たのだろう。


抱きついてきたやつの手が勢いよく離れた。


「あ…ごめんなさい」


微妙な空気が私達3人の間に流れた。


「うん…こっちこそごめん。調子に乗り過ぎた。けど、おれ達はヴァンパイアだから」


まだ言うのかよ。


若干呆れた目を向けたら、諸星 陽がムッとした顔を近づけた。


「信じてないでしょ。今ここで若菜ちゃんがどんなに嫌がっても吸血しちゃうよ?」


一瞬で鳥肌がたった。


「それにこの屋敷にいるやつら全員ヴァンパイアだから注意しといたほうがいいかもね」


そしてなんとも大きな爆弾を投下してくれた。


こんな広い屋敷の中で私だけが人間というのも不思議に思い、ふと翔人さんの顔を思い浮かべた。


頭の中を読み取ったように諸星 光が「翔人もヴァンパイアだよ」と丁寧に付け足してくれた。


「そう…なの…。わかったわ。信じる。けど、私の血を吸おうって言ったってあげるつもりは無いから」


言いたいことだけ言い、リビングを出て部屋に向かった。


その時に双子が妖しく笑っていたことも知らずに…




< 10 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop