氷の魔女の春さがし
 秋が深まる頃、山の女神はうたた寝をすることが多くなった。

 ある日、スリサズがレンズを覗いていると、女神がスリサズのすぐ目の前までやってきた。

 まるまる半年、村で暮らして、こんなことは初めてだった。

 スリサズは自分の覗き見が女神に気づかれているとは思っていなかった。

 女神はスリサズに何かを言い残して姿を消した。

 声は聞こえなかったが、唇の動きは「またね」と見えた。
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