ウソツキセンセイ
 あたしはただただ、平塚先生のことを見るしかできなくて、黙ったまま手をぎゅっと握りしめていた。


「ちょ、なんで横田さんがそんな顔するの」


「どんな顔ですか」


「泣きそうな顔」


「……平塚先生の方が泣きそうな顔してますから」


 それは困った、と平塚先生は笑って、また作業に戻った。


 ……平塚先生のこと何も知らなかったんだな、とあたしは改めて実感する。

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