ウソツキセンセイ
 それを誰にも言わないで、黙ったままの平塚先生の方が、ずっと苦しかったはずなのに。


「……じゃあ、あたし帰りますね」


「うん、お疲れ」


 他愛ないやり取りをして、あたしは理科室から出た。クーラーの効いた理科室の外は、夏の気温で蒸し暑く、立ちくらみそうになった。

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