ウソツキセンセイ
 隣に先生が立つと、ふわっと白衣から漂う柔軟剤の香りが鼻をかすめる。


 ……ちょっと近いかも。


 あたしの腕と平塚先生の腕がぶつかるぐらいの距離。この水屋、もっと大きくならないかな。


「これを一人でやろうとしていたと思うと、少し気が遠くなりますね」


 まだまだたらいの中には山積みの実際器具がある。暇つぶしになるとは言え、これにはあたしも気が遠くなりそうだ。


「…他の理科の先生に頼めば良かったじゃないですか」


「僕はこの学校に来たばかりですからね。さすがにそういう訳にはいかないんですよ」


 あはは、と困ったように笑う。だからその顔があんまり好きじゃないんだよ。


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