ウソツキセンセイ
 蒼依のお父さん、もとい蒼依パパは、あたしが蒼依と仲良くなって家に遊びに行った時に、よくお世話になった。


 こんな真夏日にはアイスを買ってきてくれたり、雨の日はあたしの家まで送ってくれた。


 蒼依に何度も「いいお父さんで羨ましい」って言うと、蒼依も得意げに「自慢のお父さんだから」と笑顔で言った。


 昼間は家にいて、夜に出勤する蒼依パパの仕事が、あたしにも蒼依でさえも分からない。


 謎を残したまま、蒼依パパはとある朝に不慮の事故で亡くなってしまったのだ。


 あたしももちろんショックを受けたけれど、それ以上に蒼依がショックを受けていた。何も食べなかったせいでひどくやつれた蒼依の顔は、今でも忘れられない。


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