ウソツキセンセイ
 例えばあたしが平塚先生に恋をしていたとして、その恋は絶対に叶うことがない。


 先生と生徒。


 その壁が邪魔をしてくるから。一般世間はその壁を認めてくれないから。


 初めから叶わない恋と分かっているのなら、あたしは絶対に恋なんかしない。


 恋をしたって、私が傷つくだけだから。


「私はいいと思うよ。そういう恋」


「え?」


「だって、ドキドキするじゃん。秘密の恋って」


 あたしにそう言った蒼依の顔は、どこか優艷な、ちょっと大人みたいな顔をしていた。


< 125 / 272 >

この作品をシェア

pagetop