ウソツキセンセイ
 夢の中の蒼依が、一歩ずつあたしに向かって歩いてくる。


 ゆっくりと、ゆっくりと。


 あたしは、なぜか足がすくんで動けなくなってしまう。


 逃げなきゃ。


 本能的に、あたしはそう感じた。


「ほら、逃げようとした」


「あ……」


「素直になることは、全然怖くないんだよ」


「ひ、平塚先生……」


「聞かせて、紅音の心」


 いつの間にか蒼依はあたしの目の前から消えていた。


 その代わりに、妖艶な笑みを浮かべて目の前に立っていたのは、平塚先生だった。

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