ウソツキセンセイ
 化学がダメなあたしに付き合ってくれる平塚先生に、すごく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


 でも、本当に分からないものは分からない。


 これじゃあいつまで経っても化学の成績が上がることなんてないに等しいよ…。


「その問題はね──」


 ゆっくりと、平塚先生の顔が近づく。


 うわ…近い。


 おまけにまた胸がドキドキしてきている。


 すぐ隣には平塚先生がいるのに、心臓の音がうるさくて、聞こえてしまうのではないかと心配になる。


 もう平塚先生の解説はそっちのけで、あたしはただそればかりが気がかりだった。

< 55 / 272 >

この作品をシェア

pagetop