【短編】君を探して、哀を奏でる
デュオ
***☆☆***


その辺に散らばる星屑を集め、廃棄ボックスへ放る。

支配者たる私は、自らの過ちを毎日のように廃棄する。

全てはリセットのため、平和のため。


私が治める世界では、民たちは私のことを所謂『神』と呼ぶ。

彼らにとっての私は彼等自身の精神安定剤、そして彼等を救うための存在。

愚鈍な種族だ。全く以て愚鈍。

そんな愛らしくも邪悪な感情を併せ持つ彼らは、度々愚かな過ちを犯してしまう。

同胞を皆殺しにする兵器を作り、己の身を滅ぼすのだ。


「ホーラ、またリセットするの?」


いつの間に傍に居たのか、眩しい金髪の青年が私に笑顔で問いかけた。


「ヘルメスさん。おはようございます」


いつからか私と行動を共にするようになったヘルメスさんは、私の服に残った星屑を取りながら問う。

キラキラと太陽に照らされて、光の粒が舞った。


「粋だねぇ君は。僕たちの世界に朝夕は無いのに、わざわざ『そっち』の言葉を使うなんて」


「馬鹿にしているのですか。確かにここ─天で朝夕はありませんが」


「馬鹿になんてするはずないだろう?」


何食わぬ顔でそう言う彼のことを、私は充分知っている。

ヘルメスさんは私に嘘はつかない。


「リセットしなければ平和は生まれませんからね。同じ過ちを繰り返し、無限ループに陥るのが目に見えているのに放置だなんて、私は嫌いです」


「優しいよねぇ。そうやって言いながらも君は僕たちの未来を考えてくれる」


どこにそんな要素があったのかと首を傾げる。


そんな私にヘルメスさんは美しい笑みを浮かべてみせた。






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