【短編】君を探して、哀を奏でる
**☆☆**
街中をどう見たってお似合いな、美男美女が歩いていた。
春の陽光を浴びて楽しげに歩く二人は、何とも微笑ましい。
彼氏側が笑顔で話しかける度、一見、クールに見える彼女も嬉しそうに応える。
「季音(ときね)。今日はどこへ行く」
季音は、少し目を見開いてから溜め息をついた。
「藍くん…。呼びつけておいてノープランですか」
「季音の好きな所に行きたくてね。季音の望まない場所はゴミって言うし」
「どんなことわざ!?」
季音の突っ込みに、さも当然のごとく笑顔を返して藍は続ける。
「当たり前だよ。季音が不快だと思った場所は、全て潰すのが定石ってもんでしょ?」
「何、これが常識だよ、みたいに言ってんですか。ていうかそれが定石って、貴方の脳内はどうなってるんですか」
「どうって、季音一色だけど」
だからどうしてこの人は当然だよ、と言うような顔をしているのだろうか。
「そんなこと言い出したら私がこの前、誤ってお冷やの水をぶっかけられた店なんて潰れているはずで──」
しょう、と最後の言葉は言えなかった。
ある一点を見つめて押し黙る。
それもそうだ。
例の店が、跡形もなく無くなっている。
街中をどう見たってお似合いな、美男美女が歩いていた。
春の陽光を浴びて楽しげに歩く二人は、何とも微笑ましい。
彼氏側が笑顔で話しかける度、一見、クールに見える彼女も嬉しそうに応える。
「季音(ときね)。今日はどこへ行く」
季音は、少し目を見開いてから溜め息をついた。
「藍くん…。呼びつけておいてノープランですか」
「季音の好きな所に行きたくてね。季音の望まない場所はゴミって言うし」
「どんなことわざ!?」
季音の突っ込みに、さも当然のごとく笑顔を返して藍は続ける。
「当たり前だよ。季音が不快だと思った場所は、全て潰すのが定石ってもんでしょ?」
「何、これが常識だよ、みたいに言ってんですか。ていうかそれが定石って、貴方の脳内はどうなってるんですか」
「どうって、季音一色だけど」
だからどうしてこの人は当然だよ、と言うような顔をしているのだろうか。
「そんなこと言い出したら私がこの前、誤ってお冷やの水をぶっかけられた店なんて潰れているはずで──」
しょう、と最後の言葉は言えなかった。
ある一点を見つめて押し黙る。
それもそうだ。
例の店が、跡形もなく無くなっている。