【短編】君を探して、哀を奏でる
「えー…?」
冷蔵庫を開けて思わず声を上げてしまった。
いつものことだが、何も入っていない。
前に季音が買っておいた食材は食べてしまい、それから買っていないのだろう。
男の一人暮らしの度合いを超えている。
季音も少食だが、藍はそれに輪をかけて少食らしい。
せめて水くらい入っていても良さそうだが、お菓子のために買ってきた物以外、忘れていた。
「んん、」
唸ってしまったのは、藍は季音が自分と居るときに他所へ出かけるのを嫌うからだ。
しかして、この状況。
喉も渇いて、かつ、藍の今後食べるものも買い足しておきたい。
「少しくらい、…コンビニくらいなら、大丈夫だよね」
十分で帰ってこよう、と妙に固く決意し、部屋を出たのだった。