モテ系同期と偽装恋愛!?
女性だけしかいない空間と、お湯の香り。
ふっと気が緩んで、口もとには自然と笑みが浮かんでいた。
大浴場と言っても小さな旅館なので脱衣所も狭く、脱衣籠も15個ほどしか用意されていない。
先客が5人いることが、使用中の籠の数で分かった。
バスセットとフェイスタオルを手にガラスの引き戸を開けて浴場に足を踏み入れると、湯けむりの奥の方から先客たちの話し声が聞こえた。
明日の神輿行脚のことを話しているので、祭り観光のお客さんに間違いないみたい。
6ヶ所しかない洗い場の端に座り、体を洗った後は、私も先客たちのいるお湯の中にお邪魔した。
少し熱めのお湯が気持ちいい……。
石造りの浴槽の縁に両腕を乗せ、その上に頭を乗せてくつろぐ。
こうしてリラックスしていると、かなり疲れが溜まっていたことを自覚する。
今日は一日中、気を張っていたので、疲れるのも当たり前かもしれないけれど。
でもそんな私よりも、横山くんの疲労の方がずっと大きいはず。
彼も広い湯船で癒されているといいのに……そんなことを考えていた。
すると横から60代くらいの女性ふたりが、私に話しかけてきた。
「あなた、女優さんよね。ほら、この前の大河ドラマに出ていた。やっぱり女優さんの肌は綺麗ね〜」