モテ系同期と偽装恋愛!?

お風呂から上がったのは、それから1時間ほど後のこと。

長い髪が半乾きの状態でドライヤーのスイッチを切り、急ぎ足で部屋の前まで戻ってきた。

広いお風呂が気持ちよくて、つい長湯してしまったことを反省。横山くんを待たせているのに……。

私を待っている内に、疲れて眠っているかもしれないという心配もしていた。

今日、話を聞いてもらえないと困ってしまう。

東京に帰ってからだと、忙しい彼にわざわざ時間を作ってもらうことに気が引ける。

それに気弱な私のことだから、時間が経てば聞いてもらいたいと思うこの気持ちが、萎びてしまいそうで。

鍵は掛かっていなくて手の中でドアノブがスムーズに回り、ドアを開けて部屋の中に入った。

襖をそっと開けると……「お帰り」と浴衣姿の彼が笑顔を向ける。

手前側の布団の上にあぐらをかいて、スマホを片手に私を待ってくれていた。

寝ずに起きていてくれたことにホッとした次の瞬間、心臓が跳ね上がり、危うく腕の中のバスグッズを落としてしまいそうになる。

浴衣の前合わせが緩いから、引き締まった筋肉質の胸もとが覗き込めてしまった。

『しっかし、いい体してんな〜』
お風呂で見知らぬ男性客が彼に対して言った言葉を、頭が勝手に再生してしまう。

洗いざらしの髪や、普段は決して目にすることのない脛から下の素足。

困った……どこに目を遣ればいいのか分からない……。

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