モテ系同期と偽装恋愛!?
可愛くないと言われたのは、今日二度目。
今までも横山くんだけには何度も言われてきた。
美人と言われる私だが、自分でも可愛くないと思っているから怒りは湧かないし、キツイ態度を取り続けるしかない私は、この先ずっと可愛い女になれそうにない。
横山くんの周りには彼に恋して近づいてくる可愛い女子がたくさんいるんだから、そういう子の相手だけをしていればいいのにと思う。
可愛くない私に、絡んでこなくていいから……。
返信しなかったら【怒ったの?】と催促するようなメールがきた。
それも放置したら次は【ごめん】と……。
怒っているわけじゃなく、困っているだけだった。
対処法を見つけられず泣き暮らした学生時代。
あのときと違い、今は平穏無事に毎日を過ごしているのに、横山くんに関わるとそんな日々を崩されてそうで怖かった。
紙袋にパンとコンパクトミラーを戻して、足元のバッグにしまった。
ノートパソコンを閉じ、引き出しから書類を入れたクリアファイルを出して立ち上がる。
これを総務に提出しに行かないと。別に今じゃなくてもいいものだけど。
背筋を伸ばし、澄まし顔でドアに向けて歩く私。
その背中に、誰かのもの言いたげな視線を感じていた。