モテ系同期と偽装恋愛!?
聞いてくれたことに対しお礼を言い、それから念のために注意事項を伝えておく。
「私が本当はこんなふうだってこと、社内では秘密にしてね。弱いのがバレて、男性に強く迫られると怖いし、女子社員に嫌われたくないから……」
「それって、社内での態度は今まで通りで、俺とも仲良くしてくれないってこと?」
「う、うん……。たまたま会議室でふたりきりになったりしたら素顔でいられるけど、他の人のいる前では、ごめんね……」
申し訳ないけれど、そういうことになる。
自分の身を守るためには、高飛車女を演じ続けるしかないから。
私の話を真剣に聞いてくれた横山くんなら、それを理解して頷いてくれるものだと思っていた。
社内では親しげに近づかないと、言ってくれるものだと思っていた。しかし……。
横山くんは急に黙り込んでしまった。
なにかを考え込んでいるような無言の間が続くので、不安になって後ろを振り向こうとした。
するとその前に彼が話し出したので、振り向くのをやめる。
「納得いかないな……。
自分を偽り続けて、紗姫は辛くないの?」
「それは……」
前に桃ちゃんにも似たようなことを言われた。
『そのキャラいつまで続けるの?
真逆な自分を演じるのってしんどくない?』
そんなふうに心配された。
辛くないとは言えない。
男性を見下すような態度を取るたびに、本当の私はこんな女じゃないのにと思ってしまう。
相手を傷つけてしまうことにも、常に申し訳なく思っている。