モテ系同期と偽装恋愛!?

ふたつ目は、高飛車な態度を取ることは、男性よけのためだけではなく、女性に嫌われないためでもあるということ。

今の私は男性を見下す強い女として、社内の女性たちに一目置かれている。

カッコイイと言ってもらえて、特に年下の女子社員からは憧れの視線を向けられている。

自分を偽っているので、桃ちゃん以外の女子社員とは友人関係は築けないけれど、敵視されていないし嫌われていない。

それがもし、本当は弱い泣き虫な女だとバレてしまったら……。

押せば手に入りそうだと考える男性たちが私にアプローチ合戦を繰り広げ、それを見た女子社員には妬まれて嫌われてしまう。

辛い学生時代がぶり返すのではないかと、どうしてもそのストーリーから抜け出せない私には、横山くんの提案を受け入れることができなかった。

しかし、彼も折れない。

「それはないだろ」と私の考えるストーリーを否定して、別の見方を教えてくれる。

「中学の時に紗姫を仲間外れにした女の子だって、今は大人になっている。
昔の過ちに気づいて、紗姫に謝りたいと思ったこともあるはずだよ」

「そ、そうかな……」

ユウたちを知らない横山くん。
根拠なんてないはずなのに、なぜか彼の言葉が心の中に染み込んでくる。

私の希望に沿う意見だからかもしれない。

ユウたちがそう思ってくれていたとしたら、どんなにいいだろう……。

それを想像しただけで、また少し、心の痛みが軽くなった気がした。

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