モテ系同期と偽装恋愛!?
横山くんの前向きな言葉が気持ちいい。
頑なな私のネガティブ思考が揺らぐのを感じつつ、彼の話の続きに耳を澄ませた。
「俺たちはガキじゃない。分別つく大人だよ。
紗姫が男に構われていても、羨ましいと思うだけでいじめる女性はもういないよ」
「そう、かな……」
「そうだと信じて。いじめなんて馬鹿な真似をすれば仕事に支障をきたすし、自分の評価を下げるだけだと分かるはず。大人なんだから」
「そう、かも……」
大人なんだから……その言葉にハッとさせられた。
私だって中高生の頃と今とでは、考え方が違う。
かつて私に辛く当たった女子たちも今は大人で、子供みたいな反応はしないはず。
ということは、私……社会人になって5年も無駄に頑張ってしまったのだろうか……。
普通にしていても、女性に嫌われたりしなかったのだろうか……。
横山くんの言葉に、心が揺さぶられていた。
暗いトンネルのずっと先の方に、ポッカリと明るい小さな出口が見えたような気がしていた。
キャップを外した緑茶のペットボトルが手から滑り落ちそうになり、慌てて握り直してキャップを閉める。
そんな私の後ろでパンと膝を叩く音がして、「よし、解決策が見えた」と明るく頼もしい声がした。