モテ系同期と偽装恋愛!?
明るい未来を描きだす横山くんの言葉に、気づけば「やってみようかな……」と了承する言葉を口にしていた。
言ってしまってから最初の心配が頭をもたげ、慌てて横山くんに確認してみる。
「偽の彼氏の計画、もしかしたら長期になるかもしれないけどいいの?
横山くんの気持ちを利用することになるし、私にしかメリットがないのに……」
申し訳なく思い言った言葉に、横山くんはキッパリと強い口調で返事をくれる。
「いい。俺を利用して」
「うん、分かった……よろしくお願いします……」
静かな深夜の古宿。
背中合わせの姿勢のままで2時間ほど話し合い、出た結論は偽の恋人として彼と付き合うというものだった。
彼がどんな思いで『俺を利用して』と言ったのかが気になり、そっと振り向くと、こっち向きであぐらをかいて座っているから驚いた。
「あ、ズルイ!
背中合わせって言ったのに」
「今、振り向いたばかりだよ」
そう言ってニヒヒと悪戯っ子のような笑い方をする横山くんの頬は、仄かにピンク色だった。
それから彼は、照れ臭そうに自分の頬を人差し指で掻きながら言う。
「確かにズルイよな、俺……色々と偉そうなこと言ったけどさ、俺に利益がある方に誘導したのは否めない」
「横山くんにも利益があるの?」
「偽の彼氏から、いつか本物の彼氏になれたらいいのにと考えてる。もちろん紗姫の気持ちが俺に向かなければ、スッパリ諦めるから安心して」