モテ系同期と偽装恋愛!?
横山くんは私のことが好き……。
男性恐怖症を治す間に、その気持ちに応えることができればベストだと思うけれど、正直言って自信がない。
恋したことがないから……。
困り顔になった私を見て、横山くんは話を逸らした。
「紗姫、手を出して」
言われて右手を出すと、彼の右手も伸びてきて軽く握手をする。
「握手は平気なんだな。
どこまでなら触れても大丈夫? 手首は?」
そう聞かれた後に握手が解かれ、そのまま手首を握られた。
これも大丈夫。
突然掴まれるのは怖いけれど、こんなふうに前置きした上で手首を握られるのは怖くない。
でも、私の顔色を見ながら横山くんの手が、手首から少しずつ上に移動すると……肘の内側でギブアップしてしまった。
「ごめん……ちょっと、怖い……」
すぐに彼の手は離れて行き、私は大きく息を吐き出す。
「まあ、東京に帰ってからだな。ゆっくり始めよう。今から練習すると、俺の方がヤバイし」
もう寝ようと言われて、私は立ち上がり布団の位置をギリギリまで障子側に寄せた。
「横山くんの布団も、襖にぴったり付けてもらえるかな」
そうすれば狭い部屋の中でも、1メートル以上の距離を置くことができるから。
「先が長そうだな……」
そんな独り言を言いながらも、彼は布団の位置をずらしてくれる。
男性が怖いという感情は、仕方ないことだと思っていたけれど、今初めて治したいと思うようになっていた。
2枚並んだ布団のこの距離を、少しずつ縮めていけたら……。