モテ系同期と偽装恋愛!?
彼が私の側を離れるとどうなるか……それは想像にたやすい。
入社間もない頃のように男性社員のアプローチ合戦が始まり、デートや飲みに誘われる日々が続くのだろう。
それに強い不安を覚え、慌てる私。
そんな私を腕の中に入れたまま、彼は耳もとで諭すように静かな声で語りかけた。
「普通の恋がしてみたいと、前に言ったよね?
誘われたらデートしてみるといいよ。その中に紗姫と波長の合う奴がいるかもしれないし。
もう男性恐怖症は治ったんだから、きっと楽しいデートができるはずだよ」
「で、でも……本当の彼氏ができるまで側にいてくれると言ったのに……」
「そうだったね。紗姫が誰かを好きになるまでは側にいたいと思っていた。
でも、ごめん。俺も限界。望みのない恋をこれ以上続けると、心が壊れそう。俺はそんなに強くないんだ……」
抱かれることさえできなかった私には、彼にあげられるものは何もなくなってしまった。
それでも心細くて不安で、これからも側にいてほしいとワガママを言いたくなってしまう。
その身勝手な甘えの気持ちをぐっと押し込めると、また涙が溢れ出し、彼のワイシャツの肩をしっとりと濡らしていった。
彼を解放してあげないと、いたずらに苦しめるばかりだと分かっている。
それに、他の女性たちに対しても……。
今日の午後、給湯室で言われた長谷川さんの言葉をずっと気にしていた。
『好きじゃないのなら、早く別れて下さい。
彼のことを本気で好きな女性がたくさんいるんです。私もその内のひとりですけど……』
私が傷つけているのは遼介くんだけではなく、彼に本気で恋する女性たちに対しても。
このまま色んな人を傷つけ続ける自分は嫌だから、笑顔で別れないと……。