モテ系同期と偽装恋愛!?
彼の肩から顔を上げ、両目をゴシゴシこすって涙を止め、無理やり笑顔を作る。
「遼介くん、今までありがとう。
普通の恋ができるか分からないけど、努力してみる。逃げずに周りの男性たちに目を向けてみる。だから、遼介くんも……」
次の恋に向かってほしいと言おうとしたら、胸の奥に鋭い痛みを感じた。
それは一瞬だったが、ナイフで刺されたような鋭い痛みだった。
その痛みの理由が分からないうちに彼の腕が解かれ、ふたりの距離が開き……偽物の恋人関係は終わりを迎えた。
「見送りはいらないよ。
明日からは、普通の同期として……」
ぎこちない笑顔でそう言った彼は、ネクタイを拾い上げて寝室を出て行った。
すぐに玄関ドアが開く音と閉まる音がして、その後は静寂に包まれる。
毛布を抱きしめたまま、声を出さずに泣いていた。
どうしてこんなに悲しいのだろう……。
彼を苦しめてしまったから?
何もお返しできなかったから?
明日からの自分の身が心配だから?
それとも……。
カーテンの閉められていない窓から、月明かりが差し込んでいる。
暗い室内をぼんやりと照らすその光は、ひどくわびしげで、支えを失った私の不安を写しているかのようだった。