モテ系同期と偽装恋愛!?
別れても俺の大切な同期だから、私に意地悪したら許さないというような話も、集まってきた女子社員にオブラートに包んで言ってくれて、そのお陰で彼という盾をなくしても、私は嫌がらせをされることなく平穏な毎日を過ごせている。
コピーした資料をホチキス留めしていたが、手を置いて小さな溜息をつき、机の引き出しをそっと開けた。
取り出したのはホチキスの替え芯ではなく、小さな水色の紙箱。
その蓋をあけると中には布張りのコンパクトミラーと、おもちゃの指輪がしまわれていた。
コンパクトミラーは夏になる前に、インド出張のお土産として遼介くんが私にくれた物。
あの時は私にだけ特別なお土産を買ってきてくれた理由が分からず、困ったっけ……。
そしてこの透明プラスチックの花型のおもちゃの指輪は、遊園地デートのくじ引き屋台で彼が獲ってくれた物。
『いつか俺の嫁さんになる日が来たら、本物の指輪を買ってあげるよ』
そんなことを冗談めかして話していたことを思い出すと、胸の奥がズキズキと痛んだ。
寂しい……彼を失った心に隙間風が吹き抜ける思いでいた。
そんなに昔のことじゃないのに、想い出の品たちを遠い過去の物のように感じてしまうのは、4ヶ月ほどの交際期間が充実しすぎていたせいか、それとも別れた後のこの喪失感のせいなのか……。