モテ系同期と偽装恋愛!?
今日のランチの場所はうどん屋。
冬曇りの空は今にも冷たい雨が降り出しそうで、こんな日は温かいうどんが食べたくなる。
桃ちゃんは鴨南蛮で、私は狸うどん。
湯気立つ丼を前にふと思い出したのは、この店のこの席で、遼介くんと3人で笑っていた記憶だった。
あの時は夏だったから、冷たいうどんが美味しかった。
会話の内容は……そうだ、私が遼介くんと友達になりたいと言ったら、『偽物でも俺は一応、紗姫の彼氏ね。分かってる?』そう言われたんだ。
今の私と彼の関係は友達に近いものだろう。
同期という繋がりで世間話もするし、この間は同期だけの飲み会にも、揃って参加した。
夏のあの時に望んだ友達関係になれたのに、何か違うと心が訴えていた。
どうしてこんなに、胸がモヤモヤするのだろう……どうして……どうして……。
うどんを一本ずつ啜りながら考え込んでいたら、「紗姫、聞いてる?」と桃ちゃんに言われた。
ハッとして我に返り、聞いていなかったことを詫びて、もう一度話してもらう。
「今日の帰り、飲みに行かない?
紗姫の誕生日だから、おごってあげる」
そう、今日12月10日は、私の28歳の誕生日。
男性社員数人から誕生日デートに誘われていたが、全て断ったので退社後の予定はなかった。