モテ系同期と偽装恋愛!?
「平田さん、聞いて……。
今の俺は疲れていて、女の子に優しくできないと思う。期待することを、してあげられる自信もない。きっと君を泣かせることになる。それでも……」
彼の言葉の途中で耳を塞いでしまったのは、続きを聞きたくないと思ってしまったから。
『それでもいいなら、俺と付き合ってみる?』
そんな言葉が続きそうな気がして、心の中で「やめて!」と大声で叫んでいた。
それと同時にガシャンと大きな音が響く。
耳を塞いだ拍子に折りたたみ傘を離してしまい、床に落ちて大きな音を立てたのだ。
しまったと思った時には遅かった。
「紗姫⁉︎」と遼介くんに呼ばれてしまい、ビクンと肩を揺らした後は、傘も拾わずに慌てて柱を離れ、雨の中に飛び出した。
全力で走りながら、激しい後悔に襲われる。
なんで映画なんか観ようと思ったのだろう……。
なんで立ち聞きなんてしてしまったのだろう……。
なんでもっと早く、あの場を離れなかったのだろう……。
しかし最も大きな後悔は、別のことにあった。
なんで遼介くんに恋していると、気づかなかったのだろう……。
涙が溢れて流れ落ち、雨と共に頬を濡らす。
荒れ狂う心の中に、嫉妬の感情を見つけ出していた。
私、とっくに遼介くんに恋していたんだ……。
目の前で他の女性に持っていかれるまで、その気持ちが分からないなんて、私はどれだけ間抜けなのだろう……。