モテ系同期と偽装恋愛!?
駅前の人波を掻き分けるように走り抜け、近くを流れる川の方へ向かっていた。
どこかで思い切り泣きたかった。
整備された川原はレンガの遊歩道になっていて、散歩やジョギングする人の多い場所だが、こんな雨の夜には誰もいないだろうと思い、そこまで全力で走っていた。
橋を渡り川原の遊歩道へと続く階段を、ブーツを鳴らして駆け下りる。
冬枯れした土手の草木に、街灯に照らされる濡れた赤レンガ。
流れの遅い水面に雨が打ち付け、波紋が広がっては消えてを繰り返していた。
勢い余って川沿いの柵にぶつかり、ようやく足を止めた私は、乱れる呼吸の中で呻くように泣いていた。
やっと気づいた恋心が大きく膨らみ、制御できないほどに彼への想いで胸がいっぱい。
それと同時に大きな喪失感を味わって、張り裂けそうに胸が苦しく、心が悲鳴を上げていた。
気づくのが遅すぎた……。
この後彼は平田さんとデートするのだろう。
食事に行ってから、彼女の家にも行くのかもしれない。
手を繋いで、キスをして、ベッドで抱き合うのかもしれない。
嫌だ……遼介くん、他の女性に触れないで……。
強くなる雨足が、川を、レンガを、私を打つ。
雨音と自分の泣き声しか聞こえない……と思った直後に、私の名を呼ぶ遼介くんの声が聞こえた気がした。