モテ系同期と偽装恋愛!?
心が壊れそうだけど、どうやら今、聞かなければいけないみたい。新しい彼女ができたという報告を。
悲しくて涙がまた溢れてきた。
震える声で自分から、痛みを口にする。
「立ち聞きしてごめんね……。平田さんと付き合うんでしょ? 前に進めてよかったね……」
よかったと思えなくても、そう言うしかなかった。
遼介くんを好きだと気づいても、もう遅い。
散々振り回して、傷つけて、やっと私から抜け出せた彼に、今さら告白する勇気はない。
しかし、クスリと笑う彼に「違うよ」と言われる。
「最後まで聞いていなかったの? 断ったのに」
「え……?」
「気持ちがないのに付き合っても、平田さんはいつか泣くことになる。それでもいいと彼女が言っても、俺が嫌だ。
紗姫の彼氏役が想像以上に堪えたからさ……同じ思いをさせたくないよ」
断ったんだ……。
耳を塞いでしまった部分で、てっきりOKしたものと思っていたのに……。
安心した途端に、今までとは違う意味で泣けてきた。
彼は私を足の上に乗せたままで上半身を起こすと、私を強く抱きしめる。
その背に私も腕を回した。
黄色い街灯の光が、びしょ濡れで抱き合う私たちを、ぼんやりと照らしている。
子供みたいにしゃくり上げて泣き続ける私の耳に、彼の甘い声が響いた。