モテ系同期と偽装恋愛!?
もう泣いて怯えるだけの私じゃない。
保守的だった過去の自分から抜け出して、そろそろ新しいことにチャレンジしてみたいのだ。
移動願いは出さなかったけれど、辞令が下されたら前向きに新しい仕事に取り組みたいと思っていた。
信号が青に変わり歩き出す。
そんな気持ちを伝えると、なぜか彼は不満顔。
「ポジティブなのはいいけどさ、俺のことは?
部署が別れたら、淋しいと思うのは俺だけ?」
「それは私も淋しいよ。でも今もチームは一緒じゃないし、部署移動したって同じ社屋だよ」
遼介くんは主に仕入れ担当で、私は卸売担当。
なので仕事は被らない。
同じ部署といっても仕事中の接点は薄く、部署移動になってもあまり変わらない気がしているのは、私だけだろうか。
それに退社後や週末は一緒に過ごしているんだし、私はそれで十分なのに……。
社屋に入り、他部署の同期に「仲いいね」と冷やかされつつ、ライフサイエンス事業部に着いた。
それぞれの席へと、離れる私たち。
始業の準備を始めると、遠い彼の席に数人が集まっているのが見えた。
相変わらず遼介くんはモテている。
私たちがよりを戻したことを全員が知っていても、女子社員たちはチャンスを狙って接近してくる。