モテ系同期と偽装恋愛!?

つまり、仕入専門部署としての支店をインドのニューデリーに立ち上げることが決定し、その責任者に遼介くんが抜擢されたということで……。

『マスコ化成株式会社、ニューデリー支店長に任命する』これがもうすぐ下される辞令の内示ということだった。

支店長というと、うちの会社では部長と課長の間ぐらいの位置付けだ。

係長から一気に昇進となることに驚き、興奮してしまった。

「遼介くん、すごい! 立ち上げから全てを任されるなんて、さすがだね!」

能力の高い彼なら、きっと上手くやるだろう。

しかも海外暮らしが始まるし、出張するより望む形での仕事ができるのではないだろうか。

よかったね、やったね、という思いの私に対し、彼が少しも嬉しそうでないのが気になった。

「どうしたの……?」

心配になり聞いてみると、天井を仰ぎ見る彼。

その口からは溜息と共に、後ろ向きな言葉がこぼれ落ちた。

「俺……無理だ……」

「だ、大丈夫だよ! 遼介くんの実力なら、きっと支店長を務められると……」

「違う。遠距離恋愛は無理」

私に視線を戻した彼は、怖いくらいに真顔だった。

仕事に対してではなく、私との恋愛を不安視しているのだと知り、途端に心が大きく乱される。

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