モテ系同期と偽装恋愛!?
「なんだね、横山くん」
「支店に連れていくメンバーを、選ばせていただけないでしょうか? いえ、ひとりだけ。彼女を……横山紗姫を連れて行きたいです。お願いします」
驚いて、彼の横顔をマジマジと見てしまった。
この人事を受け入れて、遠距離恋愛も別れるのも嫌だというなら、たしかに私を連れて行くしか方法がない。
しかし、私には海外出張経験がなく、仕入の知識にも乏しいから即戦力にはなれない。
第一、そんな身勝手な注文を、会社に突きつけていいものか……。
手首を握っていた彼の手は、一度離されてから私の手を繋いだ。
人事部長は私たちの手にチラリと視線を落とし、顔をしかめた。
「残念だが、メンバーに彼女は入れていない。立ち上げは少数精鋭でいかないと。君と同じ海外経験の豊富な人員のみを選んでいる。
横山、しっかりしてくれよ。公私混同で務まるような優しい仕事じゃないぞ」
言われたことはもっともで、遼介くんでも言い返すことはできないだろうと思ったが……。
彼は強気な視線を向けたまま、人事部長との距離を半歩詰めて切り返した。
「それならば、彼女を連れて行ける理由を、すぐにでも作ります」