モテ系同期と偽装恋愛!?
私を連れて行ける理由……?
これから海外出張に行って実績を作ってきてと言われたらどうしようと思ったが、そうではなかった。
いぶかしむ人事部長の前で、私に向き直ると、彼は一度深呼吸する。
それから廊下に響くような、よく通る声でハッキリと言った。
「紗姫、俺と結婚して。4月までに」
「え……ええっ⁉︎」
「夫婦の勤務地を同一にする社内規定があるだろう。それを利用すれば離されずに済む。
今月中に、なるべく早く入籍しよう」
驚きすぎて口をあんぐりと開けたまま、言葉が出てこなかった。
やっと恋を知ったのはおよそ3ヶ月前で、その方面ではかなり遅咲きの私。
結婚なんて、もっとずっと先にあるものだと思っていた。
それが、今月中って……。
気づけば周囲に人垣が。
大きな声のプロポーズは、どうやら隣の部署やうちの部署までも届いて、興味津々な社員たちを集めてしまったみたい。
冷やかしや指笛まで聞こえてきて、私の顔は完熟トマト並みに赤く染まる。
恥ずかしさに逃げ出したくなったが、繋がれている手を引っ張られ、腕の中に抱きしめられてしまった。