モテ系同期と偽装恋愛!?
ふたりで飲みに行くことは命の危機。
それよりは違約金を払う方が遥かにマシなので、迷うことはなかった。
「ペナルティの方がいい」
ハッキリとそう答えたら、睨むように見ていた彼の睫毛が伏せられた。
形のよい唇からは、溜息までこぼれ落ちている。
横山くんはきっと、女性に断られることに慣れていないのだろう。
プライドを傷つけてしまったのだと思い、そのことに申し訳なさを感じて心の中でうろたえたが、その直後にニヤリと意地悪く笑う彼の口もとを見てしまった。
「分かった。飲みに行くことじゃなく、ペナルティを選ぶと言うんだな」
「う、うん……」
「ペナルティは、遊園地でお子様なデート。
昼間ならいいだろ? 久しぶりだな〜遊園地。何年ぶりだろ」
え……遊園地デート……?
夜にふたりで飲みに行くよりは、健全で安全な響きを感じるけれど、私にとってはそれもかなりハードルが高いことだった。
慌ててそれも嫌だと言おうとしたら、後ろにドアの開く音がして、トイレに行っていた桃ちゃんが帰って来てくれた。
怒りはどうやら収まったようで、いつもの一見癒し系の可愛い桃ちゃんの表情に戻っていてホッとした。
味方が現れたことにも安堵して、さあ断ろうと口を開きかけたのだが、横山くんが足早にドアに向けて歩き出していた。
「浅倉、俺は仕事に戻るから。
お前らもそろそろ戻らないと、サボってんのがバレるぞ〜」
まだ話は終わっていないのに、桃ちゃんと入れ違いに出て行こうとしている彼に慌てた。
椅子から立ち上がって、スーツの背中を呼び止める。