モテ系同期と偽装恋愛!?
「横山くん、待ってよ!
私、そんなペナルティは……あっ」
行ってしまった……どうしよう……。
私の隣に戻ってきた桃ちゃんは、お菓子の箱や空き缶など、テーブルに広げた物を片付け始める。
「遼介の奴、鼻歌うたいながら出て行ったけど、なにかあった? ペナルティってなに?」
困り顔で「遊園地……」とポツリ答えた私に、桃ちゃんは首を傾げた。
意味が分からないと言いたげな目で見られるのも、無理はない。
女ふたりで芋焼酎の美味しい店に行こうと話していたのに、それがなぜか、私と横山くんのふたりで遊園地デートをする話に変わってしまったのだから。
「大丈夫?」と聞かれたのはきっと、青ざめているせいだろう。
大丈夫じゃないよ……もう断ることはできないのだろうか……。
横山くんにデートに誘われたら、女子社員の大半は喜んでOKすると思う。
遊びたいならそういう女子を誘えばいいのに、どうして私なのか……。
彼が出て行ったドアを見つめていたら、なぜか今朝の夢で見た、中学の教室のドアが目に浮かんできた。
ふたつのドアは色も形状も全く違うのに、私の視界の中でひとつに重なって見えてしまう。
嫌な予感がしてしまうのは、ただ単に私が臆病なせいだと分かっている。
霊感や予知能力の類と無縁の私なのだから、本当に悪いことが起きるとは思っていない。
それでも落ち着かないこの心。
ブラウスの胸もとを握りしめて、ひとり不安に耐えていた。