モテ系同期と偽装恋愛!?

1時間弱で目的地に到着し、車から降りた。

やっとふたりきりの車内から解放されて、心の中でホッと息を吐き出す。

辺りをざっと見回すと、久しぶりに訪れたこの場所は、記憶の中にある景色とほとんど変わっていない。少々古びた印象を受けるくらいだ。

広い駐車場は3分の2ほど埋まっていて、「意外と混んでそうだな」と横山くんが呟いていた。

天気のよい土曜日だから、スカスカという訳にはいかないでしょう。

むしろ11時近い時間に到着してもまだ駐車場に空きがあることに、経営は大丈夫だろうかと心配してしまった。

駐車場から入場口まで移動する間、「バッグ持つよ」と、横山くんが手を差し出してくる。

「結構よ」とわざと冷たい声で返事をしながら、今まで何人もの女性に同じ言葉をかけてきたのだろうなと考える。

断る女性はいたのだろうか……もしかして私が初めてだったりして……そう思い、彼のプライドを傷つける心配に顔色を伺ってしまった。

しかし返ってきたのは、ハハッと笑う明るい声。

「言われると思った。じゃあさ、手を繋ごう?」

「絶対に嫌」

「それも言われると思った!」

「私に触ったら、そこでデートは終了よ」

「それは……言われると思ってなかった……」

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