モテ系同期と偽装恋愛!?
古宿の布団の距離
◇◇◇
横山くんと遊園地デートをした日から、5日後。
7月に入り、気温は上昇の一途を辿る。
出勤して真っ先に向かったのは2階の女子トイレで、ウエットティッシュで首もとの汗を拭き、クールタイプの制汗スプレーをひと吹きすると、ヒンヤリして気持ちよかった。
「今日も一日、頑張ろ……」
前向きな台詞をボソリと呟く私だが、洗面台の鏡に映る顔は逆に元気がない。
気にしているのは、横山くんのこと。
今週は月曜から中国に出張している彼なので、遊園地以降、会っていない。
それでも彼の顔が頭から離れず、あんなふうに傷つけてしまったことを後悔していた。
あの時、嫌いという言葉の他に、なんと言い訳すればよかったのかは分からないけれど……。
制汗スプレーのボトルにキャップを閉めてショルダーバックの中に仕舞おうとしたら、トイレのドアが開いた。
「あ、おはよー」と入ってきたのは桃ちゃんで、風邪がすかっかり治って血色のよいハツラツとした笑顔を見せてくれた。
「スプレー私にも貸して、暑いー」と出された手に、仕舞おうとしていたスプレーボトルを乗せる。
洗面台の前に並んで立ち、他愛ないおしゃべりを始める私たち。
私はベランダで育てている草花のこと。今朝はハナデマリが花を開いてくれて嬉しかった。
桃ちゃんは通勤での話。
電車の中でうちの課の島本課長とバッタリ会ってしまい、仕方なく会話しながら会社まで並んでい歩いたと教えてくれた。