それは秘密です
課長は深く頷きながら返答した。


「私も同意見だ。『僭越』などではないよ。現場からの貴重で切実な声として、しかと胸に刻んでおく」
「ありがとうございます」


その後、その女性…須加馨さんのタオルは私が託され、彼女の自宅へと配送処理をしたのだった。

そのような背景があったので、また今回のキャンペーンにスタッフの一員として彼女が潜り込んでいないかどうか確認したいのだろうかととっさに思ったのだ。

人数を集めたのは派遣会社なので、うっかりこちらサイドのチェック漏れが生じ、採用してしまう可能性もなきにしもあらずだし。

スタッフの個人情報はすでに派遣会社から送られて来ていて、業務上私もそのデータを把握している。

けれど須加さんの名前はリストの中にはなかった。

結婚して名字が変わる場合もあるだろうけど、ファーストネームが「馨」さんという人もいなかったので、とにかく今回は彼女は採用されていないということだ。

応募したのに弾かれたのか、そんな募集があることさえ知らずにそもそも応募していないのか、それは分からないけれど。

求人を目にしたとしても「散々な目に合ったからもうああいう仕事はコリゴリ」と敬遠するパターンもあるだろうしね。

しかし、もし加東さんの確認したい事柄がそれだったとして、なぜ私なんだろう?という疑問が生じるけど。
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