それは秘密です
ちょっと息抜きに外に出たいけど、わざわざ一階まで下りるのは面倒くさい、という場合にそのスペースを活用するのを許されていた。

しかし開けたは良いけど、室内に戻った際にうっかり鍵をかけ直しておくのを忘れてしまう可能性も充分にあり得るので、オートロック方式になっているのだ。


「むしろ逆だよ」


私は六島君の両腕をすがるようにして掴み、両の目を見据えながら思いの丈をぶつけた。


「だって私、ずっとずっと、六島君のことが好きだったんだもん!」
「へっ?」
「もう3年近く片思いしてるんだから!」


とてつもなくキレ気味に叫んでしまい、それが呼び水となってますます興奮状態に陥る。


「あーもう、何でこんな朝の忙しい時間帯に、しかもこんな殺風景な場所で告白しなくちゃいけないのよ!」


あまりの悔しさに私は地団駄を踏んだ。


「もっとロマンチックなシチュエーションで、乙女チックに告白したかった!」

「……佐藤」


しかし穏やかなトーンで名前を呼ばれてハッと我に返る。

改めて六島君に視線を合わせると、声音同様、柔らかな眼差しで私を見つめていた。


「……今回の件で、思い知らされたんだ」


今度はだいぶ冷静に言葉を発することができた。


「私、自分が思っていたよりも更に深く強く、六島君のことが好きだったんだなって」
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