それは秘密です
「自分の気持ちに何かしらのケジメをつける時間をさ」
「……加東さんに告白するってこと?」
「いや、その可能性は限りなくゼロに等しいと思う」


ふるふると首を振りつつ六島君は答える。


「同性からの恋心なんて、ぶつけられてもただただ迷惑にしか思えないだろうから。下手したらトラウマを植え付けてしまうかもしれない」


フォローしたかったけれど、相応しい言葉が見つからないうちに話は進んで行き。


「でも、自分の中で何かしらの答えは出すよ。佐藤の気持ちに向き合うのは、それからでも良いか?」

「……うん」


私には何も異論はない。

「迷惑じゃない」って言ってくれた。

それどころか「嬉しい」って。

ギクシャクして気まずくなって、友達どころか同僚としてさえまともに話せなくなるのが怖くてなかなか思いを伝えられなかったけれど、そういった最悪の事態だけは何とか避けられた。

もう、それだけで充分。

たとえ恋人にはなれなくても、どんな形でも、六島君の傍にいられるだけで、彼の支えになれるだけで、この上なく光栄で幸せなことだから。

私はとびっきりの笑顔を浮かべ、答えたのだった。


「私、六島君の味方だから。いつまででも見守ってるから。だから焦らずゆっくりと、自分自身納得のいく答えを出してね」
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